完璧な設計図を求める、私たちの「病」
情報科学の研究や開発に身を置いていると、どうしても「すべての変数を確認し、理論上の最適解を見つけ出してから動きたい」という衝動に駆られます。
しかし、中学受験というプロジェクトにおいて、その「完璧な納得感」を待っていたら、おそらく子どもは成人してしまうでしょう。前回の対話(#08)で、私たちは「子どもの笑顔」という決定打を見つけました。それでもなお、私たちの脳の片隅には「本当にこれでいいのか?」という小さな警告灯が消えずに残っていました。
このままでは、いつまで経ってもスタートラインを越えられない。100%の納得を追い求めるのをやめ、あえて不完全な状態のまま走り出す。 そのためには、親として「どうしても避けては通れない痛み」を、まず頭で整理し、受け入れる必要がありました。
「子供にとっての大切なこと」が犠牲になる現実を、頭で引き受ける
一歩踏み出すために、私たちは中学受験というシステムが内包する「負の側面」を、あらかじめ「必要なコスト」として計算に織り込むことにしました。それは感情的には辛いことですが、あえて冷静に定義することで、迷いを断ち切るためでもありました。
自由な時間の損失: 遊びや他の習い事、家族でのんびり過ごす週末など、子どもにとって大切な時間が削られるのは避けられない事実であること。
リターンの不確実性: これほどのコスト(時間・労力・費用)を投下しても、志望校合格という結果が保証されるわけではない「ハイリスクな投資」であること。
親子にかかる負荷: 順調な時ばかりではなく、親子ともに精神的に追い詰められる「泥臭い現実」が必ずやってくること。
これらを「起きてほしくないトラブル」として遠ざけるのではなく、「中学受験という道を選ぶ以上、最初からセットになっている仕様(コスト)」なのだと、まずは頭で冷徹に受け入れることにしました。 この「不都合な現実」を引き受けることこそが、私たちがスタートを切るための最低条件だったのです。
夫婦のDialog:正解は「後付け」でいい
夫: 「結局、今の僕たちの納得感って、良くて80点くらいだと思うんだよね。でも、これ以上の分析は時間の無駄(オーバーフィッティング)かもしれない。残りの20点は、走りながら埋めていくしかないんじゃないかな」
妻: 「そうね。アジャイル開発と同じで、まずは最小限の機能でリリース(入塾)してみて、フィードバックを受けながらわが家なりの形に修正していく。それが一番現実的だわ」
夫: 「『選んだ道が正解かどうか』を悩むより、『選んだ道を正解にするために何をすべきか』にリソースを割く方が建設的だ。100%の納得なんて、終わった後にしか来ないものだしね」
妻: 「不都合な理論も、今は全部頭で引き受けたわ。さあ、いよいよわが家の『中学受験OS』を起動(ブート)させましょうか」
結論:わが家の中学受験、起動。
私たちは、100%の確信を持たずに、あえて一歩踏み出します。
これは「完成版」のリリースではなく、あくまで「わが家の中学受験・ベータ版」のスタートです。
これから、想像もつかないようなバグ(トラブル)に遭遇するでしょう。理論通りにいかない夜も来るでしょう。しかし、行動することでしか新しいデータは得られません。
正解を選ぼうとするのをやめ、この選択を正解にしていく努力を始める。 データ分析と、子どもの笑顔と、少しの覚悟。 これらを燃料にして、わが家の長い旅がいよいよ本格的に始まります。
(塾選びシリーズ・完)
振り返り
【Education #08】: 「学びの窓口」と波長の適合性。
