「……ねえ、これ見て。まだ生きてたよ」 「うわ、見せないで。封印したはずの黒歴史(含み損)が、観測した瞬間に確定してしまう……」
証券口座の奥底に眠っていた「かつての遺産」を掘り起こした夜、わが家のリビングには失笑が漏れました。私たちの投資のスタート地点は、およそ論理的とは言えない「盛大な自爆」から始まっていたのです。
■ 100万円を持った「理論派の無知」
社会人になりたての頃。 「現金のまま持っておくのは機会損失。期待値を考えれば、資産を市場に投下するのが合理的である」 マクロ経済の教科書を少し読んだ程度の私たちは、そんな「正論」を掲げ、手元の100万円を手に戦場(マーケット)へ向かいました。
しかし、そこで選んだ武器は、大勝ちを狙った「なんか凄そうな名前の個別株」。 「これ、将来のGoogleになるんじゃない?」という根拠のない楽観。初心者が陥る罠はいつも同じです。
■ 「シュレディンガーの持ち株」
期待(という名の妄想)に胸を膨らませて買った翌日、株価は面白いくらいに右肩下がり。
夫:「大丈夫、これは一時的なボラティリティだ。損切りラインはマイナス10%に設定してある(キリッ)」
数日後:「……マイナス15%か。今売るのは『安値で売る』という非合理な行動になる。ホールドが正解だよね?」
さらに数日後:「……(無言)」
ログイン画面を開かなければ、損は確定しない。 私たちはいつしか、含み損を見ないふりをする「シュレディンガーの持ち株(見るまで生きてるか死んでるか分からない)」を大量に抱えることになりました。感情というノイズが混入した瞬間に、合理的だと思い込んでいた私たちのCPUは、あっけなく完全フリーズを起こしたのです。
■ 「塩漬け」の連鎖と、市場からの逃亡
「今回はたまたま選択が適切でなかっただけ。別の銘柄でヘッジしよう」 そう言って別の個別株に手を出し、同じように塩漬けを増やす「地獄の再帰ループ」。気づけば口座は、かつての希望が詰まった「塩漬け株」の山となりました。
私たちは「投資なんてやっぱりギャンブルだ!」と逆ギレし、口座のパスワードすら忘れるという、見事な逃亡劇を演じました。
■ そして、数年後の奇跡
月日は流れ、ふとしたきっかけで数年ぶりに口座を開けてみると、そこには驚くべき光景がありました。
「……あれ? ひとつだけ、数倍になってる」 「えっ、あんなにダメだった銘柄が……?」
あれほど感情を揺さぶられ、理論を無視して放置された株たちが、「ただ時間が経過した」という一点において、独自の進化(成長)を遂げていたのです。
■ 「システム」が知性を補完する
この失敗が教えてくれたのは、私たちの「知性」は、自分のお金が絡んだ瞬間に機能不全に陥るという冷酷な事実でした。
結局、私たちに必要だったのは、高度な分析力ではありませんでした。自分自身の「感情」という最大のバグをいかに排除し、システムに運用を任せるか。 その設計思想こそが、投資の成否を分ける鍵だったのです。 Investカテゴリでは、そんな私たちの泥臭い試行錯誤の記録を綴っていきます。市場という正解のない海で、私たちが「自分の弱さ」とどう折り合いをつけ、システムを構築していったのか。そのログが、誰かの投資のヒントになれば幸いです。
